地域文化が観光資源

昨今、観光においても、モノからコトといわれ、体験型観光は地方観光の切り札的な言われ方をしています。従来型の観光は、観光客が在住する都市部(発地)の旅行会社の企画によって構成される観光でした。団体旅行などはこれに当たります。これに対して、旅行者を受け入れる側の地域(着地)側が、その地域での観光資源を基にした旅行商品や体験プログラムを企画・運営する形態が生まれています。これを着地型観光といいます。

この着地型観光が広がった背景には、旅行者の価値観の多様化があり、インターネットの普及によって、マスメディアに依らなくても情報発信が可能になったという情報流通の変化があるといわれています。着地型観光においては、交流や体験などを通じることで、名所旧跡を巡る物見遊山的な従来型の観光とは異なる、地域の独自性が高い旅行価値を旅行客に提供する、ということになります。この旅行価値とは、地域の生活を通じた地域文化の体験であり、名所旧跡などの観光資源に乏しい地域であっても、地域文化そのものが観光資源になるというものです。

山形県飯豊町の雪と農家民泊をテーマにした着地型観光による観光振興の事例です。飯豊町は人口7500人余り、山形県の南西部に位置し、新幹線駅である米沢駅からは車で30分、基幹産業は農業と畜産業の中山間地です。冬場の積雪は3メートルをも超える日本でも屈指の豪雪地域で、1年のうち半年は雪に埋もれるといいます。

飯豊町観光協会はここで逆転の発想をします。この雪をコンテンツ化、観光資源として活用することとしました。従来から、スノーモービルの盛んなこの地域で、スノーモービルの体験による観光振興を行うことにしたのです。これが台湾からの観光客の知るところとなり、台湾のテレビでも紹介されるなどして人気となりました。台湾は日本に比べて温暖な地域で、雪は非常に珍しい地域です。雪を体験するということがウケたんですね。

宿泊は農家での民泊、食事は地域で採れた山菜の和え物、ヤマメやシイタケの天ぷら、アケビ料理、山ブドウの寒天など地元産物を中心に提供されます。季節によっては農作業や山菜採りの体験ができ、農家の主人による狩りの体験談、囲炉裏でのおもてなしなど、地域にある生活文化を観光資源として活用しています。

このような取り組みで、2014年までの5年間で7000名の台湾からの観光客を誘致しています。特に名所旧跡がなく、交通の便も年に比べて不利な中山間地では、目を見張る数字です。

観光立国を目指す我が国では、政策の後押しもある中で訪日外国人の伸長が顕著であり、2017年は2869万人で、前年比119.3%です。東京オリンピックパラリンピックが開かれる2020年には4000万人の政府目標で、達成可能なペースで推移しているように見えます。2017年の外国人宿泊数を見ると、三大都市圏の4612万人前年比110%に対し、三大都市圏以外の地方部は3188万人前年比116%と三大都市圏の増加率を超え、地方部のシェア41%と初めて4割を超え、地方の存在感が増している状況です。

名所旧跡などの観光資源が乏しい地域においても、地域にある文化や特徴そのものが観光資源になり得ることが事例からもわかります。何か特別なことを、予算をかけてやらなければ、観光客を誘致することはできないということではありません。マイナーチェンジ程度の変化は必要かもしれませんが、独自に持つ魅力に気付き、磨きをかけ、知ってもらうことが重要なことになるでしょう。

参考文献
田舎の力が未来をつくる! ヒト・カネ・コトが持続するローカルからの変革 合同出版
金丸弘美 2017年

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